Distagon:ディスタゴン

 
 

 このディスタゴンの命名はディスタンス(距離)とゴン(GONIO:大きな角度)という言葉の合成から成っています。ディスタゴンはコンタレックスをはじめとする一眼レフに適用する為、ミラーボックスのフランジを稼ぐ必要がある。焦点距離が短くとも、後玉とフィルムの間隔を長くとらなければならなく、様々な矛盾を含んだ上で成り立っているレンズである。設計はあのホロゴンで有名なグラッツェル博士である。15mm、25mm、28mm、フィッシュアイの16mmなど、多くのバリエーションがあるが、中でも傑作と言われる2本を紹介しよう。
 1972年発表の35mmF1.4がその1本で、グラッウェル博士直々の設計だ。今から30年前に非球面レンズとフローティングシステム(撮影距離によって、特定のレンズ群の間隔が変化し、至近時の諸収差を効果的に補正する技術)を採用したこのレンズは非常に画期的であった。F1.4という明るさを得る代わりの代償は大きく、様々な収差を含む問題点を処理するには非球面レンズは無くてはならない存在であった。フローティング機構は当時では暗中模索で、設計当初は実に簡単だったものの、ツァイスレンズである以上、高水準を求められ最終段階ではかなり複雑な機構となっていった。コンタックスRTSマウントのレンズでは唯一の非球面採用で、今でも同レンズは堂々の現役で高い人気を誇っている。
 もう1本は最新設計の21mmF2.8である。広角レンズに於いては、ディストーション(歪曲収差)の除去に気を取られがちであるが、色収差の発生について考え、その除去という新しい角度から切り込み設計された。最新のコンピューターにより設計されたこのレンズはまさに完璧。アポ・ディスタゴンという俗名まであるほど、後玉の低分散ガラスにより色収差を見事に除去。不動の地位を築いたのである。

 

 

 

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