ウィリー・ウォルター・メルテ

( Willi Walter Merte:1889-1948 )

 

 ウィリー・ウォルター・メルテは、1889年ドレスデンで生まれた。1917年からドイツ敗戦の1945年までツァイス社のレンズ設計を担当した。メルテはルドルフとヴァンデルスレブの発明したテッサーの改良を進め、テレ・テッサーを代表する、エルノスター、ビオテッサー、オルソメター、ビオターなど、多くのレンズを開発した。第2次世界大戦中はドイツの軍事用光学機器の研究開発も行なった。
 終戦が彼の運命を180度変えてしまった。1945年、パットン将軍率いるアメリカ軍がイエナに進駐すると、優秀な研究員たちはオーバーコッヘンに移住を余儀なくされたが、軍需に関わっていたメルテは、アメリカ本国に強制移住させられることとなる。アメリカでメルテはNASAも無い時代に、宇宙探査用機器や光学兵器の開発に専従することとなる。
 移住して僅か3年後の1948年、異郷の水が体に合わなかったせいか、オハイオ州デイトンで、まだ若くしてこの世を去った。ZEISS・IKONの故郷でもあり、また彼の故郷でもあるドレスデンに、とうとう彼は戻る事ができなかった。戦争という運命の波に巻き込まれた彼は、天才的なレンズ開発能力が災いして、なんとも悲しい人生となってしまった。

   

inserted by FC2 system