N-Mirotarって何?

 
 

 N−Mirotarとはレンズというより 暗視野撮影装置であり、Nは夜(独語・Nacht)の頭文字である。暗闇の中、肉眼では全く見えない映像でも、 増幅管により8万倍に増幅され、スポットを浴びたステージのように被写体が浮かび上がる。ファインダー内は鮮やかなグリーン(オシロスコープの波形の色と言えばご想像頂けるでしょうか?)で、月明かりでのシャッタースピードは感度400のフィルム使用で約1/500秒と、手持ちでの撮影を可能にしている。日中もしくは室内など、明るい所では3ヶ所のピンホ−ルのついたマスクを前面に装着し、インテンシファイアの光量オーバーによる過入力破損を防ぐ必要がある。ミラーを剥き出しにできるのは、暗闇のみである。

 鏡筒全体がレンズではなく、前・中・後の三部構成になっている。
前=反射望遠(対物)レンズ
中=画像倍増管(インテンシファイア)
後=リレーレンズ
焦点距離は210mm換算である。

 前から順に説明していこう。 まず対物レンズから。 対物レンズは4群4枚の反射望遠で、 副鏡付きの1枚目、 裏面鏡の2枚目 (裏面鏡はレンズの向こうに反射面があり、反射面への行き帰りにレンズ内の通過で補正を完了してしまうもの)、それから補正および焦点調節レンズが2枚あり、計4枚である。シュミット・カセグレン式(天体望遠鏡の設計方式)の改良型で 焦点範囲は20m〜∞である。色収差は極限まで補正され、次の増幅管に最適になるよう設計されている。
 次はイメージインテンシファイヤという画像増幅管で、直列に3層並べてあり、単三電池2本を並列1.5Vで駆動し、30〜40時間の連続使用が可能である。一部の見えない夜の光の光束を光に換え、可視領域の弱い信号を増幅する。3つの増幅管はファイバーグラスプレート(ポラバックによく用いられているような)によって連結されている。電子光学映像システムにより、3つめのインテンシファイヤの出力面に画像を呈す。

 最後にリレーレンズ。光学系は現行のマクロプラナー100mmに類似しており、3つめのインテンシファイヤの出力面の映像を、 フィルム面までロス無く忠実に送り出す。倍率は1:4になる。
 夜行性動物、麻薬取引、湾岸警備、密猟などに威力を発揮したそうだが、さだかでない。受注生産であり、280万円という高価な価格から、実際にあまり普及せず、カタログから姿を消した。これは数を販売して利益を確保するというより、ツァイスのここまでできる技術力を誇示する為に設計されたと考えられる。
 また、余談ではあるがN−Mirotarの発売元はヤシカであり、Y/Cマウントのカメラに装着して使用することを前提に作られているが、ZEISSが直接発売元になっている同じ仕様の『ORION』というスコープもあり、先端部は一緒であるが、マウント部分には3つのアタッチメントが用意されており、それぞれY/Cマウント、LEICA-Rマウント、そして直視できる接眼用と、交換式になっている。

 

 

この写真のレンズの先端についているのは、ただのキャップではなく、
3つのピンホールのついた明るさ低減キャップになっている

 

以下はN-Mirotarによる麻薬取引の現場写真です。

写真では明るく見えるものの、夜の地下駐車場ですから、

肉眼ではほとんど視界が無い状態とお考え下さい。

 

 

 

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