ポルシェ・デザイングループ

 

 『人が技術に奉仕するのではなく、技術が人に奉仕する』という人間工学的理念を基に、CONTAX RTSのボディデザインを担う。3社合同開発ではあるが、実際にはポルシェ・デザインチームがプロジェクトのイニシャチヴをとった。
 RTSのボディデザインはドイツの名門、ポルシェ・デザイングループに発注された。撮影者の意思と一体となって対応する操作性をコンセプトとして設計は始まった。レバー、ノブなど、撮影に必要な全ての操作部は自然に指がかかる位置に配置した。レリーズボタン、スピードダイアル、露出補正ノブのロックは排除した。なぜなら、頻度の高い操作系にロックがあると、機動性、即写性に劣るからである。その為、スイッチの形状やクリックの硬さには十分な配慮がされている。シャッターボタンは応答性を最重要視し、従来は大きなストロークの必要な機械式レリーズであったが、軽いフェザータッチで作動するよう、電磁レリーズ化したことは大きな進歩であり、このカメラの特徴でもある。柔らかな弾力性のあるカバーに包まれて手の中にピッタリとフィットし、飽きのこない美しいフォルムをポルシェ・デザインが生み出したのである。

 以降のカメラにも、ポルシェ・デザインは継承されたものの、ヤシカの依頼でカメラデザインをポルシェ氏が手掛けることは無かったが、京セラがヤシカを吸収合併した際に、再度ポルシェ・デザイングループにデザインが発注された。今度はポルシェ、ツァイス、京セラの3社合同開発となり、それにより生まれたカメラが CONTAX T である。
 『私自身が常に持ち歩いて楽しみたくなるようなカメラを作りたい』と語ったのは、RTSのデザインを担当したF.A.ポルシェ氏。前回は一眼レフであったが、今回のT開発のコンセプトは楽に携帯でき、実用本位ではなく、ずっしりとした手応えが味わえる新次元のコンパクトカメラであった。収納時や携帯時に凹凸の無い、フラットでシンプルなその美しいフォルムは、保持した時の素晴らしい感触と軽快な操作感を与えるものでした。CONTAX Tは、RTS同様、ポルシェの人間工学理論より設計され、曲線と直線の見事な調和からくる美しいボディに身を包み、特に沈胴式のレンズと巻き上げレバーは、格納すると、見事にフラットになり、すっきりした外観を保ち、携帯時にもスムーズである。発売から約20年経った今でも、CONTAX Tは愛用者の絶えない人気者である。
 今日、CONTAX Tシリーズはもちろんのこと、ミノルタTC−1、リコーGRシリーズなどの高級コンパクトカメラのマーケットは大きいが、Tはこれらの草分け的存在なのである。

 

 

 

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